人付き合い

「嫌われる勇気」-自由とは嫌われることである-

こんな人におすすめです

  • 「上司や同僚、部下との人間関係に悩みが尽きない」という方
  • 「承認欲求が強い自分をどうにかしたい」と感じる方
  • 「他人からよく見られたい」気持ちが強く、しんどさを抱えている方
  • 「なぜか自分だけが不遇に思える」など、自分の人生に満足できない方
  • 「管理職になって伸び悩んでいる」「転職したいけれど踏み出せない」という方
  • 「もっと自由に、自分らしく生きたい」と思う方

「嫌われる勇気」というタイトルは、かなりインパクトがありますよね。同時にとても惹きつけられるタイトルでもありました。この本のベースとなるアドラー心理学は「個人心理学」とも呼ばれており、“自分らしく生きるための考え方”を基盤としています。「まわりが自分をどう見ているかではなく、自分がまわりをどう見るか」、「相手を変えるのではなく自分が変わる」といったとらえ方をすることで、結果的に周囲との関係性も改善されると説いています。

私は気弱であまり強い発言ができない上、まわりからどう見られるかも気にする性格です。その上課長という肩書きのため、部下に指示を出したり指導しないといけない立場です。自分の指導が部下からどう思われているのかめちゃくちゃ気になってしまいます。今でも。

ただ、相手がどう感じているかを知る術はない以上、気にしていてもしょうがないことと教えてくれているのがこの本です。それはそうだよなと頭では認識できるようになっただけでも収穫でした。

もっとも、この本が目指す「自由な自分」になるためには、まわりの目を気にしない=たとえ嫌われても気にしない勇気を持つことですので、実践するには努力が必要です。

本書を読むと得られること

  • 他人の期待や評価よりも自己決定を優先しやすくなる
  • 人間関係の本質を理解し、対人トラブルを軽減する方法が分かる
  • 「原因論」ではなく「目的論」に基づいた前向きな考え方を身につけられる
  • 他者との健全な距離感を保ちながら、自分の人生を主体的に生きるヒントを得られる

書籍概要

本書『嫌われる勇気』は、心理学者アルフレッド・アドラーの考え方を、哲人と青年の対話形式でわかりやすく解説してくれています。「人に嫌われることを恐れるよりも、自分らしく生きることを優先すべき」というメッセージが根幹にあります。

青年が抱えるコンプレックスや人間関係の悩みを、哲人がアドラー心理学の観点からの解釈を提示していく構成です。この青年の悩みが自分と重なる方は多いと思います。そうした意味で痛いところを突いてくるなといった場面が多くなると思いますが、全体を通じて会話形式で進むためとても読みやすいです。

読後には「自分の人生は自分でコントロールしていい」という勇気や自信を得られる一冊といえます。

「課題の分離」で他人の評価からの脱却

アドラー心理学の中心にあるのが「課題の分離」という考え方です。簡単に言うと、「他人の課題」と「自分の課題」を明確に分け、自分の課題に集中することで、他人の評価や行動に振り回されなくなるというものです。

例えば、部下に指示を出した際、「部下が納得して行動するかどうか」は部下の課題であり、「自分が適切な指示を出すこと」が自分の課題です。この違いを理解することで、「なぜ部下が思うように動かないのか?」というストレスから解放されます。

会議のシーンでも、他人にどう思われるかを気にするあまり思い切って発言できないという方も多いのではないでしょうか?課題の分離を適用すれば、「自分が発言すること」が自分の課題であり、「その発言を他人がどう評価するか」は相手の課題だと割り切れます。この考え方を日常的に実践することで、必要以上に他人の視線を気にせず、のびのびと行動できるようになるのです。

極端な話、こちらがどんなに相手に配慮していてもよく思われないこともあれば、反対に相手に配慮してなくとも好感を持たれることもありえます。そのような不確かなことを気にしてもしょうがないということです。

「承認欲求」を手放して自由に生きる

本書では、「承認欲求」からの解放が自由と幸福への第一歩だと語られています。多くの人は他者からの承認を求め、自分の行動を制限してしまいます。しかし、アドラーは「人間の幸福は自己決定から生まれる」と主張します。

仕事の場面での教訓

管理職として、部下や上司からの評価を気にするのは当然です。しかし、それが行き過ぎると、真に必要な決断や行動が取れなくなります。本当にやるべきことは褒められなくともするべきですし、褒められないからといって止めることも間違いです。承認欲求を基準とした行動は、本質からずれてしまう危険性を指摘しています。本書を読むことで、他者の評価を恐れるのではなく、自分の信念に基づいた行動を選ぶ勇気を持つことの大切さを再認識できます。

原因論ではなく目的論

アドラー心理学は、「人は過去ではなく、未来の目的で動く」という考え方を強調します。例えば、「自分は不器用だから部下と良好な関係を築けない」というのは、過去に原因を求める言い訳に過ぎません。確かに不器用だと良好な関係を築きにくい面はあるかもしれませんが、不器用さと良好な関係が築けないことに因果関係はありません。

むしろ本書では、不器用であることを言い訳に、部下と良好な関係を築くことを諦めているという「目的論」を採用しています。本書では、過去の経験に縛られるのではなく、「今、自分がどうしたいか」に焦点を当てることが重要だと説かれています。

部下との関係改善に役立つポイント

部下との摩擦が起きたとき、「あの時もっと気をつけていれば」と後悔することはしょっちゅうあります。しかし、くよくよしていても何も変わらないので、いかに「これからどう関係を修復していくか」に目を向けることが大切です。言葉ではわかってても、実践するのは勇気が入りますし、根気も必要ですよね。

共同体感覚(他者貢献)

自分の人生を自分の意志で生きる一方で、他者への貢献を意識することが自分の居場所感や幸福感につながるという考え方です。孤独に陥るのではなく、共同体の一員としての自覚を持つことが望ましいという点が強調されています。

まとめ

『嫌われる勇気』というタイトルだけ見ると、ただ「人から嫌われても気にするな」という乱暴なメッセージを打ち出しているかのように思われがちです。しかし実際には、アドラー心理学の根幹である「目的論」「課題の分離」「共同体感覚」をわかりやすく伝えるためのインパクトあるタイトルだといえます。

私が40代課長として本書を読んだ経験から思うのは、“誰かの顔色をうかがい続ける”のではなく、“自分の意志で人生を選び取り、必要なところでは自分の責任を全うする”姿勢を大切にしたい、ということです。すぐにできるかどうかではなく、まずはそれでいいんだと思えたことだけでも収穫でした。

もちろん、この考え方を社会や組織の中で実践することは簡単ではありませんが、背中を押してくれる強い味方になってくれるような一冊です。

「嫌われる勇気 + 要約」や「嫌われる勇気 + レビュー」などのキーワードで検索してみると、本書のエッセンスがまとめられた情報が数多く出てきます。それらを参考にするのも良いですが、やはり実際に本書を手にとって青年と哲人の対話を追体験すると、自分の悩みや心境にぐっと落とし込みやすくなるのではないでしょうか。特に管理職やリーダーポジションにある人間が抱えがちな「対人関係」「評価」「責任」の悩みとの向き合い方を、アドラー心理学の視点から捉え直す機会になると思います。

管理職になったばかりで伸び悩んでいる方、40代でもう一度自分の生き方を見つめ直したい方、転職を考えてはいるものの周囲の目が気になって踏み出せない方など、どんな状況にいる方にとっても、“自分らしく生きる”というテーマを根本から見つめ直すきっかけになる一冊です。

  • この記事を書いた人

ソラ

40代前半の会社員です。中小企業の課長まで昇進できたものの、管理職という立場に悪戦苦闘している毎日です。

そんな現状から逃げ出したいと転職や独立が脳裏をよぎるものの、今のままでは結局うまくいかないと判断。

ビジネス書や自己啓発本を通じて、社会人として、管理職として、そして一人の人間として、より成長していきたいと考えています。

このブログでは、その過程で出会った良書を自分なりの解釈でレビューしています。

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